大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和34年(オ)44号 判決 1963年3月12日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人大蔵敏彦の上告理由第一点について。

本件は、本件建物につき所有権移転請求権保全の仮登記にもとづき所有権移転の本登記を経由した上告人から、右建物につき被上告人らが共同して競落したことを原因として所有権移転登記を経由した被上告人らに対し、右共有名義の所有権移転登記の抹消登記手続を請求する訴訟であることは記録上あきらかであるところ、右訴訟は必要的共同訴訟であると解すべきである。従つて、原審が、右と同じ見解のもとに、被上告人(控訴人)長田は、自分の申し立てた控訴は控訴期間徒過の理由で却下されたのにかかわらず、被上告人大川の控訴の効果によつて、控訴人たる地位を有するものと判断したのは正当である。所論は、独自の見解にもとづき原判決を非難するものであつて、採用することができない。

同第二、第三点について。

原審は、所論の各登記はいずれも上告人と金進洙との間で株式会社モナミに対する金進洙の債務の弁済を免れる手段として通謀してなした虚偽の意思表示によるものである旨の被上告人らの主張に対し、挙示の証拠により原判示各事実を認定した上、上告人主張の消費貸借、抵当権設定および代物弁済に関する契約は原判示の強制執行を免れるために仮装したものであると認めるのが相当であり、従つて上告人のためになされた所論各登記はいずれも仮装の契約を原因としてなされた無効の登記である旨説示しているのであつて、右判断は首肯するに足りる。論旨第二点は、原判決は当事者の主張しない事項について判断をしたものであつて理由不備の違法がある、と主張するけれども、その前提を欠くものであつて原判決には所論のような違法はなく、論旨第三点は、経験則違反を主張するけれども、結局原審がその裁量の範囲内でなした証拠判断および事実認定を非難するものであつて、いずれも採用することができない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 五鬼上堅磐 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己 裁判官 石坂修一 裁判官 横田正俊)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例